——日本語の“まどろみ”に隠れた音とリズムの物語
私たちが日常的に使う「うとうと」という言葉。
眠気がゆるく波のように寄せてきて、意識がふっと遠のくあの瞬間をぴったり言い表す、不思議な語感があります。
でも、よく考えると少し変ですよね。
「うとうと」って、一体どこから来た言葉なのでしょう?
今回は、日本語の音の成り立ち・古語の名残・文化的背景をたどりながら、「うとうと」の正体を紐解いていきます。
■「うとうと」は“オノマトペ”として生まれた
実は「うとうと」は、言葉としての意味が生まれるより先に、
眠りに落ちかけたときの呼吸のリズムや、意識が遠のく様子を音として模したものだったと考えられています。
たとえば…
- まばたきがゆっくりになる
- 呼吸が深く、静かになる
- 頭が前へカクッと落ちる直前の“ゆらぎ”
これらは外から見ても「音」や「リズム」を感じる動きです。
そうした微細な変化を、日本語は昔から音として捉えて名づける文化がありました。
「うとうと」は、その延長線上にある言葉なのです。
■ ② 「うと」には “遠くなる” という古語の意味があった
もうひとつ興味深い説があります。
古語で「うと(疎)」は
“心が離れる・距離ができる”
という意味で使われていました。
そこから派生して、
意識が遠ざかる → うと うと(繰り返しで擬態語化)
になったという見方です。
眠りに落ちる直前は、確かに意識がすっと遠くなります。
「疎(うと)くなる」感覚と、「まどろみ」の身体反応が重なったことで
“うとうと”という言葉が自然に育った、と考えられています。
■平安時代の文学には「うつらうつら」が出てくる
平安文学には、すでに「うつらうつら」という言い回しが登場します。
- 意識が “うつり” そうで “うつら” ない
- 完全に眠るわけではなく、浅いまどろみの状態
これが後に省略され、
発音しやすく丸みのある 「うとうと」 へ変化したという説もあります。
**日本語は「音が言いやすい方向へ流れていく」**という傾向があるため、
“うつらうつら” → “うとうと” はとても自然な変化なんです。
■「うとうと」は“肯定的な眠気”を表す珍しい言葉
英語の “doze” にも似ていますが、日本語の「うとうと」には
やさしい・柔らかい・心地よい
というニュアンスが含まれます。
だからこそ、次のような場面でよく使われます。
- 日なたでうとうと
- 電車の揺れでうとうと
- 本を読みながらうとうと
- お風呂の中でうとうと(危険だけど…)
つまり、
「安心できる場所で訪れる気持ちいいまどろみ」
を指すことが多いのです。
「眠気」を扱う言葉で、ここまで“幸福感”を帯びたものは実は珍しいんです。
■“うとうとする時間” は、人間の脳にとって特別だった
脳科学的にも、うとうと状態=シータ波が出ている時間は、
・創造性
・直感
・記憶整理
などに関係していることがわかっています。
つまり「うとうと」は、
単なる眠気ではなく、脳がひらかれる前奏曲のような状態。
古語の「意識が遠ざかる感じ」と、現代の脳科学が示す「創造性の芽」が、
なんとなくつながってくるのが面白いですよね。
■まとめ
「うとうとする」という言葉には——
- 眠気のリズムを音で表したオノマトペ
- 古語「うと(疎)」=意識が遠ざかる
- 平安文学の「うつらうつら」からの音の変化
- 文化としての“心地よい眠気”の表現
- 脳が創造性を高める特別な時間
これらが折り重なって生まれた、日本語ならではの深い表現でした。
今あなたが「ちょっとうとうとしてるな…」と感じる瞬間。
それは、古語の時代から現代までつながる、
“人間らしさのひとコマ”なのかもしれません。
OPTATUM(オプタウム) ピローミスト ユニバースドリーム


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